進路指導部から

何のために学ぶのか

 1989年11月、ベルリンの壁が開放される様子はリアルタイムでテレビ放映されました。アメリカの政治学者フランシス・フクヤマは『歴史の終わり』(The end of history)で、人類が目指してきた自由主義がゴールに到達したと考え、当時世界の多くの人がそれを信じました。

 ところがそれは楽観だったのでしょうか。スウェーデンの調査機関V-Demは、2019年の世界に民主国家・地域は87あり、非民主国家は92あると報告しました。あれから30年を経た今、なんと民主国家は少数派なのです。

 コロナウィルス対策では強権的な政治を行う国家では、都市封鎖(ロック・ダウン)や個人の行動追跡といった徹底した感染拡大防止策を取り、感染者数、死者数を抑え込んでいます。一方で基本的人権を尊重し、経済活動の自由を保障しつつ「自粛」によって感染拡大を抑制しようとする国家は苦戦しています。

 人権を保障しながら経済的繁栄を続け、平和と国民の健康を守る国づくりに諸君はどう関わっていきますか。これを考えるために君たちは今学んでいるのです。進学がゴールではありません。使命感を持って学んでください。