進路指導部から

進路指導部からのメッセージ

ポジティブな物語

 早稲田大学に、作家の村上春樹さんの著作や資料を集めた国際文学館(村上春樹ライブラリー)が開館することとなりました。開館を前に行われた村上春樹さんの記者会見に関する記事が28日の読売新聞にあります。

 村上さんは「今の若い人は自分の未来について、ポジティブな物語を作れているのか。」「僕らが若い頃には、頑張って努力すれば世の中はよくなるという共通認識があった。」と語っています。そして「いつの世の中でも理想はあるべき。」とも話しています。

 確かに現代は、高度成長期のような未来への希望を描ける時代ではありません。しかし、若者のエネルギーの強さは今も昔も変わらないはずです。むしろ現代のほうが、次の時代にむけて解決すべき課題は山積しているといえます。生徒諸君が未来について語れば、おのずと勉学への意欲がわいてくるはずです。国際文学館の基本理念として村上さんが寄せた言葉です。<物語を拓こう、心を語ろう>

 

 

大学入試のあり方に関する検討会議提言より

 先日、検討会議で提言(案)が示されたことをお知らせしましたが、7月8日にこの提言が公表されました。このなかで、大学入試に必要な科目について以下のように述べられています。

 経団連と大学関係団体による「採用と大学教育の未来に関する産学協議会報告書」では、文系・理系を問わず大学で身につけるべきリテラシーとして、「外国語コミュニケーション能力」「数理的推論・データ分析力」「論理的文章表現力」が挙げられている。また、令和3年度入試からいわゆる文系学部で共通テストにおいて数学を課す改革が行われた例もあった。と指摘しています。

 この提言は、特に社会科学系学部で数学を入試に課さないことによって、学生の数理的推論・データ分析力が不足している実情があることを指摘しているものです。今後、文系学部で数学を入試で必修にするような働きかけがあるのかもしれません。

 まずは数ⅠAをしっかり学ぶことが大学進学には必要です。数学から逃げずにこつこつ勉強を積み重ねていきましょう。

女子中高生のための東大工学部紹介

 東京大学から、女子生徒を対象とした工学部紹介(Tech Girl Meetup2021.pdf)がオンラインで開催されるというお知らせをいただきました。7月10日(土)の午後、東大工学部の教授や女子学生のお話を聞き、談話会が開催されるとのことです。


 詳しくは、東京大学オープンキャンパス特設サイトにアクセスしてください。

総合型選抜・学校推薦型選抜について

 6月30日に「第28回大学入試のあり方に関する検討会議」が開催され、提言の案が会議資料として配布されました。このなかで、総合型選抜・学校推薦型選抜を今後も推進すべきことが述べられています。総合型選抜・学校推薦型選抜は一般選抜と比較して、評価に一定の時間を要する選抜方法(面接・口頭試問・小論文試験等)を実施しやすいなど、志願者と大学とのより良いマッチングにもつながる、としているという考えに基づいています。

 ところが、AO・推薦入試に関する実態調査の結果、小論文、口頭試問、プレゼンテーションなどの選抜が必ずしも広く行われていない状況があるとのことです。その理由について、選抜に手間をかけることが可能かどうかを考えるために、一般選抜における記述式問題の出題状況を見てみます。提言案では、このことについて、国公立では81.6%であるのに対し、私大では54.1%にとどまるのが現状であると述べています。一般に私大では受験生が多く、採点時間と人材の確保に難しい面があるとのことです。こうした状況が、推薦入試への対応にも当てはまるのではないでしょうか。

 今後も、総合型選抜・学校推薦型選抜の理想を追求して入試改革を進めていく必要はありますが、その理想どおりの選抜は実施が難しいのが現状です。どのような選抜が行われるのかをしっかり見極め、単に早く進路を決定したいという動機だけから安易に推薦入学を目指すのは、現状では勧められないという理由はここにあります。

学部選び

 3年間を見通した進路指導のなかで、2年生の年度末までに第1志望を宣言してもらいます。もちろん3年次になってからも志望校については検討を続けますが、2年生の終わりまでにいったんは志望する大学像を明らかにしてもらいます。
 そのためには進学する学部を決めるわけですが、その際によくある質問についてお伝えします。
 まず、「多くの国立大学に教育学部があるのですが、私立大学には教育学部が少ないのはなぜですか。」というものです。教員になるには、必ずしも教育学部でなくてはならないのではなく、教員免許を取得できる課程があればどんな学部でも大丈夫です。私たち教員も、教育学部のほか、文学部や理学部、体育や芸術学部出身の人がたくさんいます。
 また、「私大では学科が細かく分かれていますが、国立大は学部で募集するケースが多く、自分の学びたい分野があるのかどうかわかりません。」というものです。国立大学は学部で募集し、入学後に専攻分野を決める場合が多いのです。たとえば、史学科と明確な学科名がなくても、文学部であればまず史学専攻はあるはずです。
 いずれにしても、蛍雪時代4月増刊号「学部学科案内号」をみると、自分の学びたい分野がどんな学部にあって、それがどのような大学にあるかを調べることができます。この本は生徒の皆さんの各教室においてありますから活用してください。